パートナーと出会ったときからの話

パートナーとは初対面から、一緒に暮らすことに決めた。

彼は、何時間もかけて、お金が全然なかったのに、わたしに会いに来た。

デパートの地下で、お弁当を買ってきてほしいと頼んだら、それも買ってきてくれた。

予想よりも、時間がかかって、わたしは体調が悪かったから、家に招いた。

それは、軽率だったけれど、わたしはそれでよかった。

 

初めて会った時から、彼がわたしを愛していることがわかった。

一生愛していることもわかった。彼は、一生のうちで、一人しか好きにならないタイプの人間だということが、すぐにわかった。

家に来た時から、彼はそわそわしながら、幸せそうだった。

彼の歩き方は独特で、妖精が歩いているみたいだった。

足音を立てずに、足が地面についていないみたいに、ふわふわと歩く。

だから、彼を怖いとは思わなかった。

話すときは小さな声だった。

赤い、ミトンの手袋をしていた。もう、春だったけれど。彼はそのころ、家賃含めて、十万円で暮らしていた。その中の二万円で、借金を返していたから、八万円しか持っていなかった。

 

彼の食べ方が好きになった。困ったような、小さな子供みたいな、おどおどした顔をするから、どうしたのか聞いたら、おいしすぎる、こんなおいしいもの、食べたことがないと言っていた。それを聞いて泣きそうになった。今でも、食事をするたびに、そういう顔をするから、今でも泣きたいような気がする。

 

価値観は、最初からあっていた。そして、彼は、わたしを何よりも優先して生きる覚悟があることが、見て取れた。うそをつけるタイプじゃないこともわかった。

 

食べ方も好ましかったし、体臭もなかったし、物静かで、わたしのことを好きだった。

働き者だったし、きれい好きだった。

新しいことを覚えたり、てきぱき動くことは苦手そうだったけれど、同じ作業を地道にすることは好きなようだった。

暴力も振るわなそうだった。

わたしは、好きになった相手と結婚したい、という考えがなかった。

誰とでも、ある程度は暮らせるし、一人でも暮らせる。

でも、不潔で、暴力的で、人の話を聞かない、金に汚い男はご免だった。

そういう男にはうんざりしていた。

自分があるように見せかけて、単に自分勝手な男はたくさんいた。

でも、嫌なところがない相手となら、一緒に暮らしていくうちに、だんだん好きになるだろうと思った。

まして、相手はわたしのことを好きなのだ。

念のため、戸籍を見せてもらい、収入の証明書を見せてもらった。嘘はついていなかった。

それから、ずっと一緒に暮らしている。

彼のことが嫌になったことは一度もない。

お茶の入れ方も、どの頻度でおちゃっぱを変えるか、とか、どの程度部屋をきれいにしておきたいか、という価値観が一致している。

彼は、今ではほとんどの家事をする。

買い出しにも行く、ごみをまとめてから出す、お風呂掃除をする、定期的にかびもとる、洗濯をして、天気を見て、干したり乾燥機にかけたりして、たたんで、しまってくれる。

してほしいことは頼む。困ったときには相談する。

パートナーは自分の気持ちを表現するのが苦手だから、ときどき、どういう気持ちか、聞いてみる。

一年たったけれど、喧嘩らしいことはしていない。ときどき、わたしが「スイカを切り口を下にしまうなんてどういうつもりなの」と怒ることがあるくらいだ。

 

彼が父親でとてもうれしい。

妊娠をすると、豹変する男が多いと聞いている。逃げられなくなるからだ。

でも、彼はそうじゃなかった。

わたしは、母親になる覚悟が、できているのか、わからない。

でも、パートナーがいるから、きっと、やっていけると感じる。