延命のために読書していた頃

妊娠35週目になった。
来週から臨月だ。 
赤ちゃんがいつ出てきてもおかしくない。


そのせいか、いろいろなことを自動的に回想してしまう。

わたしはたくさんの本に命を救われてきた。
苦痛を和らげて、他の世界を知る、もう死んだ誰かであっても、本を読んでいる間、わたしは一人ではなく、対話できた。

狂った家族、つらい経験、そういったものがあって、でもいきようとする人たち。


わたしは、生きていたかったようだ。

ドストエフスキー、ミヒャエルエンデ、リンドグレーンマクドナルド、村上春樹よしもとばなな
ほかにもたくさん。
時間があればずっと読んでいた。
読書の世界は優しくて、誰もわたしを罵倒しなかった。
頭がおかしいと言ってくるのは、家族だった。



眠れないので、温泉に行った。
疲れきれば、眠れると思って。

熱いお湯に使っていたら、暑さが和らいで感じられた。
呼吸も心臓も深くなった。
焦りは消えて頭の中の金属的な圧迫感が薄れた。

足のむくみやかゆみも落ち着いた。


温泉に入っても、皮膚からはなにも吸収しないというが、家の風呂とはやはり違う。
パワーがある。
地球なのか宇宙なのか知らないけど、パワーがわたしに入ってくる。


父の仕打ちや母の仕打ちが自動的に再演されて、延々と頭のなかで消えないのは変わらないけれど、温泉から帰ってきた今は放っておくことができる。
わたしは生きていて、彼らはここにいない。